所属部署に配属されて、まず初めに行うシャドーイング(シャドウイング)。新人研修として、教育カリキュラムに取り入れてる病院も多いでしょう。
「看護学生の時もやったはずだけど、看護師になっても先輩の仕事を見学してるだけでいいの?」
「先輩と1日一緒って緊張する。注意することは?」
新人NSさんの悩みにお答えします!
シャドーイングの目的
シャドーイングとは、ロールモデルの後ろを陰のように離れずついてまわる実践型の学習方法です。
ロールモデルとなる先輩看護師をシャドーイングすることで、看護師の実践を見学・体感し、そこでの経験を知識と結びつけることで、より深い学びとすることができます。
主な目的は、
- スタッフとして身を置くことで、病棟の流れやルール、部屋や物品の配置、日常的に行われる処置やケアを理解する。
- 先輩看護師の動きから、情報収集の仕方、時間の使い方、観察の仕方を学ぶ。
- 先輩看護師の姿から、傾聴・共感の姿勢など患者さんへの関わり方や態度を学ぶ。
- 先輩看護師とのコミュニケーションをとり、信頼関係を構築するきっかけを作る。
学生の時は、看護師の1日の流れをイメージ出来ればいいのですが、看護師となってからは自分がそこで働くことを具体的にイメージしながら動くことが大切です。
1日のスケジュール
①シャドーの対象となる先輩を確認し、挨拶する。
まず病棟に着いたら、ナースステーションで「おはようございます」「よろしくお願いします」と挨拶をしましょう。
あらかじめ荷物置き場を教えてもらっているなら先に置いてきます。時間をかけずに、一旦荷物を置いてメモ帳とペンだけ持って早めの挨拶を心がけます。
ステーションに行くまでの廊下や荷物置き場に先輩がいたら「おはようございます」と挨拶をしましょうね。
ステーションではその日の自分のペアとなる先輩を確認します。貼り出されていたり、あらかじめ予定表を渡されてペアの先輩が記載されている場合もあるでしょう。
最初は顔と名前が一致しなくても大丈夫。わからなければ、近くにいる若い先輩看護師さんに聞いてください。自分が一年目の時のことを思い出して、優しく教えてくれるはずですよ。
担当の先輩がわかったら自分の名前を名乗り、「1日よろしくお願いします」と改めて挨拶をしてくださいね。
②情報収集の見学
看護師の1日は情報収集から始まります。
電子カルテの使い方や、見ているページ、メモしている項目など実際にどのように情報を取っているのか観察しましょう。
色の分け方や、メモする項目の配置なんかも参考になるはずです。
電子カルテ以外にも処方箋や病棟の患者ファイルなど、職場によっても情報収集する場所が違うので覚えておきましょうね。
③点滴や内服準備
患者さんのところに行く前に、必要な点滴や内服を準備していく事がほとんどです。
点滴のミキシングの方法などは参考書やネットで調べれば出てくるので、初回はまず出てきた単語、物品の場所、Wチェックする薬剤など所属先で決められているルールや、先輩が言葉で教えてくれた内容をメモしましょう。
一度見学した看護手技は勉強した時に知識と経験が結びつきやすいので、帰宅したら一度参考書や手順書を確認します。
二日目以降は手順をメモしたものや参考書のコピーを持参し、現場で学んだことを付け足していくと知識が整理され、学びが深まるでしょう。
④受け持ち患者の検温
準備ができたら実際に受け持ち患者さんの部屋を回ります。
VS測定やフィジカルアセスメント、点滴や内服の投与といった基本的な手技はもちろんですが、その病棟でよく観察されている項目がわかる場面なので、観察頻度の多かった項目から勉強するなど、自分の学習の指標にもなります。
また、声の掛け方や話す姿勢、環境整備のタイミングや方法、一人ひとりへの時間のかけ方など勉強になることがたくさん出てくると思います。
看護師さんの性格や経験年数によっても分かりやすく個性が出てくる箇所なので、分かりやすいところや素敵だと思ったところはどんどん吸収して忘れないようにメモしていくといいですよ。
⑤おむつ交換、清潔ケア
病棟の介護度や助手さんの人数にもよると思いますが、決められた時間になるとスタッフ全員で一斉に清潔ケアに回り始める病棟も多いです。
ここでは見学者ではなく、人手としてカウントされるので毎回メモを取っていると流れを止めたり邪魔になってしまいます。多数の患者さんに対して毎日行うため勝手に体が覚えるので、終了後にルールや教えてもらったコツをメモするくらいでいいでしょう。
看護学生の時に習った手順はあまり役に立ちませんので、現場で覚えるをモットーにたくさん経験してください。
⑥昼食 ー配膳、下善、与薬ー
昼食の時間になると、食前後の内服やインスリン、食事の準備を開始します。
各病棟によって、食事介助が必要な患者さんが多かったり、配膳・下善は助手さんがやってくれたりと特色は異なるでしょう。脳神経疾患の患者さんが多い病棟では、食前の口腔リハビリを行ったりもするはずです。
昼食に合わせて計画立てて行動しているので、それぞれの準備を始める時間の目安を理解しておきましょう。
看護師も、チームのスタッフに引き継ぎをしながら順番に休憩に入ります。
⑦カンファレンス
その日のNS全員で病棟カンファレンスを行い、患者さんの状態変化や指示の変更、方針を情報共有したり、問題点の解決に向けた計画を相談します。
患者さんを受け持っていない初期は話についていけずについ眠くなりがちですが、居眠り、あくびは意外と分かりやすくてすぐバレます。
まだまだ意見を出すのは難しいですが、新人看護師さんたちが見学したこと、実践できたことなど病棟スタッフ全員で進捗状況を共有する場合もあります。自分に話が振られるかもしれないと思って、常に聞いている姿勢はアピールしておきましょう。
⑧記録
患者さんのVS値やその日の状態の看護記録をします。
人の記録する姿をただ見ているだけだと眠くなります。記録する項目や優先順位、記録する場所を教えてもらいながら見学するといいでしょう。
SOAP記録は新人看護師がつまずきやすい項目ですが、自分だったらどんな記録を残すのか、今日自分と同じ景色を見てきた先輩看護師はどんなふうに記録したのか比較して参考にしてみると勉強になります。
⑨申し送り
最後に夜勤さんへ患者さんの状態を申し送ります。どんな内容を申し送るのか、病棟によってルールや色があったりもするので参考にしましょう。
聞いていて分かりやすいと思った先輩の、申し送りの組み立て方だけでも知っておくといいですよ。
シャドーイングをする上でのポイント
先輩に1日ついて回るのは、すごく気を使うし疲れますよね。
1日で終わればいいですが、カリキュラムとして数日間設定されている病院も多いです。
シャドーイングを出来るだけ有用なものにするために、シャドーイングをする上でのポイントを知っておきましょう。
メモをする
毎日新しいことをたくさん見学し、教えてもらい、とにかくメモの毎日です。技術の手順ひとつひとつをメモしているとキリがないので、一般的な内容は家で参考書を確認し、現場で教えてもらったコツやルールを聞き逃さないようにしましょう。
家に帰ってメモした内容を振り返り、見学した看護技術は参考書をコピーしてそこに書き足していくといいですよ。
相手に伝わる返事をする
シャドーイングで先輩について回るのは気を使うし、とっても疲れると思いますが、実は先輩も気を使っています。
たくさんのことを教えてあげたい、経験させてあげたいと思いながら関わっているので、返事が聞こえなかったり反応が悪いとガッカリされてしまいますよ。
笑顔で新人らしくいい返事で返してくれるとやっぱり可愛いし、たくさん教えてあげたくなります。
質問をする
わからないことは積極的に聞いて大丈夫。ただ、タイミングだけ気をつけましょう。
患者さんの検温中にあれこれ質問すると、患者さんに余計な不安を与えてしまい可能性があります。
周りに患者さんがいない時、記録の時、質問はあるか聞かれた時など空気を読みつつ質問すれば、ちゃんと答えてくれるでしょう。積極的な姿勢が評価につながります。
わからないことや、メモしそびれてしまい思い出せないことなども聞いてしまって大丈夫です。
経験を伝える
シャドーイング期間が長いと、何回か見学したことは実践してみようと提案されると思います。
この手技は何回見学したか、聞かれた時に答えられるようにしておきましょう。
やってみる?と聞かれた時に、やります!と答えられるのが一番ですが、どうしても不安なら何が不安で自信がないのかを相手に伝えるようにしましょう。
おわりに
どうでしたか?
シャドーイングはただメモを重ねるのでなく、振り返り整理をした上で自分の知識にしていくと学びが深くなりますよ。
先輩とコミュニケーションをしっかりとりながら、有意義なシャドーイング期間にしてくださいね。
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